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フェルメール:画家のアトリエ(絵画芸術)
《 画家のアトリエ ( 絵画芸術 ) 》  1665年〜66年頃 ヨハネス(ヤン)・フェルメール
The Art of Painting. (Die Malkunst).
あのフェルメールが、自身で最も愛した作品です。
Kunsthistorisches Museum, Vienna, Austria. 蔵 120.0cm×100.0cm )


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2004年7月28日、神戸市立博物館で開かれていた、『 栄光のオランダ・フランドル絵画展 』 を観てきました。
16〜17世紀のオランダ絵画を集めた展覧会でしたが、中世の名残を残した絵や、ルネサンスの香りのする絵、
それにレンブラントなどのバロックの重厚な絵と、さまざまなタイプの絵を楽しめた、素晴らしい展覧会でした。

しかしながら、この展覧会の目玉はもちろんこの絵。
アジアでは初公開となる、フェルメールの 《 画家のアトリエ (絵画芸術) 》 です。

ということで、今週は常設のゴッホ、ルノワール、モネ、クリムト、レンブラントではなく、特別版として、
フェルメールを取り上げてみたいと思います。

《 絵画芸術 》 とは、フェルメール自身がつけたタイトルですが、それはこの絵が、単なる風俗画ではなく、
寓意画であることを示しています。
ただ、一般にこのタイトルは解りにくく、今では正式なタイトルとしてはあくまで 《 絵画芸術 》 なのですが
多くの場合、《 画家のアトリエ 》 あるいは 《 アトリエの画家 》、《 アトリエのフェルメール 》 など、
さまざまに呼ばれています。

おそらくフェルメール自身であろう画家が、アトリエの中でイーゼルに向かい、一人のモデルを相手にして制作
している情景ですが、このモデルは芸術家に霊感を与える古代ギリシャの歴史を司るミューズ・クレイオとして
ポーズをとっています。 月桂冠を頭に載せ、名声を表すトランペットを手に持ち、もう片方には史書をもつ・・・

などと・・・・・・
この絵の寓意画たるゆえんを小難しく論ずるのは、苦手なので止めにして、ここでは、フェルメールについて、
そして数奇とも言えるこの絵の来歴について、少しお話したいと思います。

17世紀オランダ絵画の黄金期を代表する巨匠として、フランス・ハルス、レンブラント・ファン・レイン、
そしてヨハネス・フェルメールが挙げられますが、この3人は、それぞれ一世代ほどの年齢差があります。
フェルメールの生まれは、1632年。 レンブラントより30年ほど後、3人の中では一番後に登場する天才です。
多くのネーデルランド画家が父親も画家であったのと異なり、彼は、美術商であり布地の製造者であり、宿屋も
経営する比較的裕福な商人の家に生まれました。
父親の死後、家業を継ぎますが、その頃すでに、彼は画家だったようです。 というのも、その翌年には、
デルフトの聖ルカ組合に画家として登録されているからです。
彼は美術商であり、美術品の鑑定家であり、宿屋の経営者でもあったのですから、積極的に画家として活動
しなくても生計は立てられたわけで、そのせいか、生涯に描いた絵は、それほど多くはなかったようです。
現在、フェルメール作品として残っている絵は、三十数点。
確実にフェルメールの作であると認められている作品は32点とも34点とも言われています。
ただ描いた作品の数は少なくとも、彼の絵は、彼が生きているうちから高く評価され、かなり高額だったようで、
一部の少人数のグループや収集家のために描かれることが多かったようです。
しかし、そのような平穏な日々も、やがて破局を迎えます。
1672年、フランスがオランダに侵攻し、オランダは破局的な経済状況に追い込まれます。
フェルメールの順調だった商売も行き詰まり、1675年、43歳で死去したときには、未亡人と8人の未成年の子ども、
それに多額の借金が遺されました。

彼が亡くなったとき、この絵も妻の元に遺されたのですが、多額の借金のため競売にかけられるのは必至。
妻は、亡き夫の最も愛したこの絵を何とか手元に残そうと、実の母親に譲渡したかのように手続きしようと
試みますが、裁判の結果それもならず、人手に渡ってしまったそうです。

その後、この絵は可哀想なことに、当時最も人気の高かった画家のサインに書き換えられたりして、
さまざまな人手を経ることになります。
そのためこの絵は長い間、デ・ホーホの作品とされていましたが、19世紀に至って、フェルメール作品と確認されるのです。
最終的に、オーストリア・ハンガリー帝国の名家・チェルニン家の手に渡るのですが、チェルニン家が
1800年代の後半、ウィーンの宮殿に画廊を設け、一種の私設美術館のような形で一般に公開したことに
よって、広く世界に知られるようになり、フェルメール作品と確認されるきっかけにもなるのです。
その後、このヨーロッパの至宝と呼ばれた作品は、ヒトラーによってリンツに計画された総統美術館の
メインの絵画とするために、チェルニン家から買い上げられ、総統官邸に警備のために常に兵士を配置
しながら掲げられていたと言われています。
ベルリン陥落の後、アルトアウスゼーの岩塩鉱山に隠されていたこの絵は、米軍の手によって発見され、
米軍の、ドイツに集められていた美術品はその前に所蔵されていた国の政府に返還するという方針通り、
オーストリア政府に返還され、現在、ウィーン美術史美術館に収められています。
米軍からオーストリアに返還された後、領地の多くを共産化したチェコに持っていたため没落寸前にあった
チェルニン家が、アメリカの画商をスポンサーにして、この絵はヒトラーによって強制的に買い取られた
ものであり、その所有権はチェルニン家にあるとの裁判を起こしますが、チェルニン家当主の父親の証言
によって、その主張は退けられ、政府の所有と決着したようです。
確かにヒトラーがこの絵を手に入れる際、チェルニン家の固定資産を徹底的に調べ上げたり、さまざまな圧力
をかけたようですが、チェルニン家当主の父にすれば、決して銃で脅されたわけでもなく、あくまで合法的に
紳士の駆け引き・商談の結果、ヒトラーの手に渡ったものだと、貴族の名誉にかけて言いたかったのでしょう。

高尚な主題、完璧な構図、光の強弱とコントラストという全く難しい方法による完璧な遠近法・・・
そして、高価な絵の具を豊富に使い、細部まで丹念に描かれた、完璧な技法。
バロックのお手本が、ここにあります。

カーテンによって隠された、見えない窓からの光に強調されるモデルと、
拡散する光によって浮かび上がる室内。
手前に置かれた椅子。
テーブル上の石膏のマスクとスケッチブック。
正装してキャンバスに向かう、後姿の画家。
背後の壁面に掛けられた、この時代から見ても古い壁掛け地図や
天井から吊るされたシャンデリアにも、寓意画としての意味があるらしい・・・

観ていて、溜め息の出るような素晴らしいひと時を過ごせたわけですが、
ちょっと気になったのが、天井の描写でした。
他の部分の精密・精緻な描き方とは違って、この部分だけがベタ塗りのような感じに見えたのです。
ひょっとしたらこの部分は、後に誰かによって手を加えられたのかも知れませんね。

参考壁紙  《 窓辺で手紙を読む若い女
真珠の耳飾の少女 ( 青いターバンの少女 )
クリムトの 《 アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 Ι
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